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若手研究者の声

HLAと疾患感受性

2015年2月17日

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HLAと疾患感受性

肝疾患研究部 上級研究員

宮寺浩子


 この度、“若手研究者の声”への執筆の機会をいただきましたので、“HLAと疾患感受性“という話題を提供したいと思います。研究所内外の先生方や、このページをご覧になった方々のお役に立つところがあれば幸いです。
 HLA(ヒト白血球抗原(human leukocyte antigens))は抗原提示を担う免疫系のタンパク質です。他の動物種の場合と合わせて、“主要組織適合性抗原(major histocompatibility complex (MHC))”とも呼ばれます。HLAは小胞体内で内在性・外来性タンパク質に由来するペプチドを“ペプチド結合溝”に結合し、HLA-ペプチド複合体として細胞表面に発現します。HLA-ペプチド複合体をT細胞受容体が認識することで、T細胞選択、機能分化、活性化が行われます。HLA遺伝子は6番染色体短腕部(6p21)の“HLA領域”にコードされます。これは全長約4 Mbに及ぶ領域で、多数の発現遺伝子、偽遺伝子が密に存在し、複数の遺伝子座位からなる多重遺伝子族を構成しています。また、各座位の遺伝子が高度の多型を呈し、各座位間の連鎖不平衡により特徴的なハプロタイプが形成されています。これらの特徴は臓器移植における組織適合性や、HLAと疾患との関連を考える上で重要です。
 HLA領域の遺伝子多型は自己免疫系疾患、感染症、重症薬疹など多様な疾患と強く関連しますが、研究が活発に行われているのは、ごく一部の疾患に限られており、HLAが疾患感受性と関連するメカニズムは、多くの疾患では明らかにされていません。HLA遺伝子多型の部位はペプチド結合領域に集中しているため、HLAと疾患との関連は“HLAが提示出来るペプチドがアリル産物間で異なること”で説明出来ると考えられています。例えば、特定の自己抗原ペプチドを提示しやすいHLA型を持つと、その自己免疫疾患を発症しやすくなる、とする考え方です。しかし実際には、HLAとペプチドとの相互作用はHLAアリル産物間で大きく変わらない場合も多いため、疾患関連解析において観察される高いアリル特異性を、ペプチド結合性のみで説明するのは困難です。
 最近、筆者らは、HLA遺伝子多型がペプチド結合性のみならず、HLAタンパク質の安定性も制御しており、HLAアリル産物間ではタンパク質安定性が顕著に異なることを明らかにしました。そして、HLAタンパク質の低安定性と自己免疫疾患(1型糖尿病)感受性とが関連すること、すなわち1型糖尿病リスク型のHLAアリルの多くが、安定性が低いHLAタンパク質をコードすることを見出しました。HLAタンパク質の低安定性と1型糖尿病との関連は複数の先行研究で示唆されていましたが、HLAタンパク質安定性を定量することが困難であるため、詳細な解析は行われていませんでした。本研究で我々は、HLAタンパク質の細胞表面発現量を測定することで、タンパク質安定性を推測する手法を開発しました。この方法を用いることにより、多数のHLAアリル産物についてタンパク質安定性を測定し、HLAタンパク質安定性と疾患との関係を解析することが可能となりました。これまでに得られた知見を合わせると、HLAと疾患との関係にはHLAタンパク質のペプチド結合能、安定性の二つの特性が寄与していると考えられます。この研究はまだ発展途上であり、今後、これらの知見を基に疾患の発症機序を解明し、臨床的にも有用な知見を得るまでには、長い道のりが続きます。最後に、これまで本研究を行うにあたり、お力添えいただいた、共同研究者ならびに多数の方々に、この場を借りて深謝いたします。
 現在、私は肝疾患研究部において、慢性B型肝炎とHLA型との関連のメカニズムの解明に取り組んでいます。今後、肝炎・免疫研究センターの恵まれた研究環境を生かし、研究の進展に貢献できればと思います。

発表論文:Cell-surface MHC density profiling reveals instability of autoimmunity-associated HLA. Miyadera H, Ohashi J, Lernmark Å, Kitamura T, Tokunaga K. J Clin Invest (2015) 125: 275–291.
http://www.jci.org/articles/view/74961
プレスリリース(東京大学):http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20141209.pdf


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