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米国科学誌『Cell Reports』掲載予定 ― 細菌由来の環状ジヌクレオチドが造血幹細胞とその周辺環境を制御する ― 

2015年4月1日

–細菌由来の環状ジヌクレオチドが造血幹細胞とその周辺環境を制御する–

(要旨)
感染症に対して速やかに末梢の免疫細胞を増加させることは、生体防御に必須である。その際、骨髄や脾臓といった造血組織による免疫細胞の産生が重要な役割を果たす。骨髄の造血幹・前駆細胞(HSPC)は免疫細胞を含む全ての造血細胞を作り出すことから、感染応答においても重要な役割を果たすと考えられているが、病原体によるHSPCの制御機構は十分に明らかになっていない。私たちは環状ジヌクレオチドであるbis-(3′-5′)-cyclic dimeric guanosine monophosphate (c-di-GMP)という細菌特異的な分子がアダプター分子STINGを介して造血幹・前駆細胞全体の増殖および骨髄外への遊走を促す一方、最も未分化な長期造血幹細胞の数および骨髄再構築能を低下させることを明らかにした。さらに、c-di-GMPは造血幹細胞ニッチに対して作用し骨髄の間葉系幹細胞の細胞数およびKitリガンド、CXCL12などのニッチ因子の発現を低下させることを示した。以上よりc-di-GMPが骨髄ニッチにおける造血幹・前駆細胞の新たな制御因子と考えられる。

【研究の背景】
私たちの血液を構成する赤血球、白血球、血小板は全て、骨の中・骨髄にわずかに存在する未分化な造血幹・前駆細胞から作られています。このうち白血球は病原細菌の感染から防御する上で非常に重要な役割を果たしており、体にこれら異物が侵入した場合、急激に白血球を産生する数を増やすために平常時の造血から緊急時の造血へとスイッチングする必要があります。しかしながら、造血幹・前駆細胞レベルでこのスイッチングがどのように制御されているかの全体像はまだ明らかになっていません。そのため、造血幹・前駆細胞が細菌のどのような分子に反応するかを明らかにすることは、造血システムの生物学的な理解を深めるとともに、感染症の新たな治療法を開発するためにも重要な課題です。

【本研究の概要・意義】
今回、独立行政法人(本年4月1日より国立研究開発法人) 国立国際医療研究センター研究所、生体恒常性プロジェクトの田久保圭誉プロジェクト長と小林央研究員らは、National University of Singaporeの須田年生教授らと共に、全ての血球を作り出す血液の大本の細胞集団である造血幹・前駆細胞の外来微生物に対する応答機構を解明しました。

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モデル図: 細菌に由来するcyclic di-GMPは造血幹・前駆細胞および造血細胞の維持に働く骨髄ニッチ細胞にSTINGを介して作用し、造血幹・前駆細胞の増殖と遊走を引き起こす。

造血幹・前駆細胞は、体に細菌などの異物が侵入するとそれを排除するために多数の白血球を生み出すとともに、全身に白血球を送り出します。白血球のような免疫細胞の中には様々な分子センサーがあり、細菌の侵入を検知できる仕組みが備わっていますが、造血幹・前駆細胞レベルでどのようなセンサー分子が機能しているかについてはほとんどわかっていません。
プロジェクトチームは細菌の作り出すcyclic di-GMPという分子に着目し、その分子が造血幹・前駆細胞の増殖制御に関わっているかどうかを検証しました。cyclic di-GMPは大腸菌やサルモネラといった私達の身の回りの細菌に広く存在する分子です。このcyclic di-GMPを投与すると造血幹・前駆細胞は活発に増殖を開始するとともに、脾臓や末梢血中にも流れ出しそこでも増殖することが確認されました。これは細菌感染時に引き起こされる白血球の供給メカニズムによく合致した現象です。
一方、cyclic di-GMPのセンサー分子であるSTING分子を欠損した造血幹・前駆細胞はこのような応答が見られなくなることから、造血幹・前駆細胞に備わったSTINGが造血幹・前駆細胞に備わったcyclic di-GMPのセンサーであることがわかりました。
さらに、cyclic di-GMPは造血細胞だけではなく、造血幹・前駆細胞が維持されるのを助ける細胞であるニッチ細胞、とりわけ骨を作る細胞を供給する間葉系幹細胞と呼ばれる細胞に作用することで、ニッチ細胞の数が減少し、さらに造血幹・前駆細胞を骨髄内に留める役割を果たす分子であるKitリガンドやCXCL12の減少を引き起こし、cyclic di-GMPは造血幹・前駆細胞とニッチ細胞の両面に働いて造血幹・前駆細胞の増殖と遊走を促していることを明らかにしました。

【今後の展望】
今回の研究で造血幹・前駆細胞に備わる外来微生物のセンサー分子の一端が解明されました。STING経路を操作することで、細菌感染などで白血球産生が十分でない状態でない患者さんの感染症治療のサポートにつながる可能性があります。

【発表雑誌】
雑誌名:Cell Reports
論文名:Bacterial c-di-GMP affects hematopoietic stem/progenitors and niches through STING(細菌のc-di-GMPは造血幹・前駆細胞およびそのニッチにSTINGを介して働きかける)
掲載日:米国東部標準時間4月2日正午(日本時間4月3日午前1時)に、先行してオンライン版に掲載予定。

 【参照URL
Cell Reports ホームページ (http://www.cell.com/cell-reports/home)

【注意事項】
報道の解禁時間は日本時間4月3日午前1時(米国東部標準時間4月2日正午)です。新聞掲載は3日朝刊以降解禁となりますのでご注意下さい。

 《本件に関するお問合せ先》
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト
プロジェクト長 田久保 圭誉(漢字名前)(たくぼ けいよ)
電話:03-3202-7181(内線2875)        FAX:03-3202-7364
E-mail: keiyot@gmail.com
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

《取材に関するお問合せ先》
国立国際医療研究センター 総務課 広報係長
担当:三山 剛史(みやま つよし)
電話:03-3202-7181(内線2028) <9:00~17:00>
E-mail: tmiyama@hosp.ncgm.go.jp


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