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ゲノムワイド関連解析で同定した新規糖尿病遺伝子の機能的検証

2012年12月14日

米国科学誌『PLoS One』掲載
Deletion of CDKAL1 Affects High-Fat Diet-Induced Fat Accumulation and Glucose-Stimulated Insulin Secretion in Mice, Indicating Relevance to Diabetes.


〜ゲノムワイド関連解析で同定した新規糖尿病遺伝子の機能的検証〜

岡村 匡史(感染症制御研究部 ヒト型動物開発研究室長)
加藤 規弘(遺伝子診断治療開発研究部長)

【発表雑誌】


雑誌名:PLoS One. 2012;7(11):e49055.
著者・論文名:Okamura T et al. Deletion of CDKAL1 Affects High-Fat Diet-Induced Fat Accumulation and Glucose-Stimulated Insulin Secretion in Mice, Indicating Relevance to Diabetes.
掲載日:2012 Nov 16
【参照URL】 http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0049055

(要旨)

【研究の背景】多因子疾患形質の責任遺伝子を探索する研究アプローチとして、ゲノムワイド関連解析(GWAS)が2007年頃より本格的に実施され、新規の遺伝子座が多数同定されてきた。これらは、極めて多くのサンプルを対象として遺伝統計学的根拠により染色体上の推定領域が「示唆」されたものである。当該領域で、さらに特定の遺伝子に絞り込み〔精密マッピング〕、それを責任遺伝子として機能的に裏付ける研究〔機能解析〕は別途行われる必要がある。

    代表的な多因子疾患である2型糖尿病に関しても、50を超える遺伝子座が報告されているが、責任遺伝子及び機能的意義の明らかとなったものは少ない。


【研究の目的・意義】
『GWASから責任遺伝子へ』の道筋を示すため、東アジア人で最も遺伝的効果の顕著な2型糖尿病遺伝子座の一つ、Cdkal1に関して、ノックアウトマウスの作出と、その表現型解析、ヒト病態との突き合わせ(特に、対立遺伝子レベルでの、糖尿病リスクと肥満リスクとの逆説的関係の検討)を行った。

 
【結果】ノックアウトマウスでは、通常食飼育時に代謝関連形質の変化が目立たなかった。高脂肪食負荷時には、インスリン分泌能が軽度低下していたが、初期(16週まで)にはインスリン感受性の亢進が(図1)、そして後期(20週以後)にはインスリン感受性の悪化が見られ、同時に耐糖能も悪化していた(図2)。食餌の種類に拘らず、全週齢で、ノックアウトマウスの方が野生型マウスより体重は少なかった。同遺伝子多型での、この耐糖能と体重との“逆説的”な関係は、ヒト集団でも同様に認められた(図3)。


【結論・今後の展望】マウスでのCdkal1遺伝子の欠損は、個体レベルの軽度インスリン分泌不全を伴い、高脂肪食負荷時には、時間経過と共にインスリン感受性が変動した。Cdkal1は食事と相互作用をしながら、糖代謝の恒常性維持において代償的機序を示す可能性がある。

 今後、遺伝–環境相互作用のモデルとして、in vivo(個体)での分子動態・ネットワークを解析するとともに、組織特異性、pleiotropy(多面性)に関しても探究を進める。 





 





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